実家の片付けで出てきたパソコン、グラフィックボードだけでも売れる?

床の間の掛け軸を下ろし、箪笥の着物を一枚ずつ確かめて、ようやく二階に上がる。子ども部屋の机の下には、黒くて大きな箱が残っている。何年も前にお孫さんが置いていったゲーム用のパソコンか、お父様が旅行の写真や動画を編集していたデスクトップか。「古いパソコンなんて、粗大ごみでしょう」と、そこで迷わず処分の山に回してしまう方は多いはずです。

「蔵と押入れのお宝手帖」の織部宗一郎です。読者の方から、骨董と一緒に出てきたパソコンの扱いを尋ねられることがあります。私は機械には疎いのですが、放っておけない話だと思い、メーカーや公的機関の情報に当たって調べたことを書き留めておきます。

パソコンそのものは古くても、中に入っている部品の一つ、「グラフィックボード」には値がつくことがあります。入っているかどうかの確かめ方、外すときの心得、売り先、そして本体の後始末までを、順にお伝えします。

グラフィックボードは、パソコンの中の「映像の専門職」です

グラフィックボードは、パソコンの映像処理を専門に受け持つ板状の部品です。本体の中の基板(マザーボード)に差し込む「拡張カード」の一種で、ゲームの画面を滑らかに動かしたり、動画の編集や書き出しを速めたりする役目を担っています。大量の計算を同時にこなすのが得意なため、人工知能(AI)の計算にも使われるようになりました。

この部品には、名前が二つあります。心臓部の半導体(チップ)を手がける会社と、そのチップを板に載せて製品に仕立てる会社が別々だからです。チップはNVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intelの三社が中心で、製品に仕立てるのはASUS、MSI、GIGABYTE、玄人志向といった会社が多く見られます。掛け軸でいえば、書いた人と表装した表具師が別にいるようなもので、査定を頼むときには両方の名前が手がかりになります。

ここで、骨董との大きな違いを申し上げておきます。骨董は古いほど値打ちが出ることがありますが(掛け軸の見分け方は実家の蔵に眠る掛け軸、価値があるものとないものの見分け方に書きました)、パソコンの部品はその逆です。新しいものほど値がつき、次の世代が出るたびに前の世代の値は下がっていきます。グラフィックボード専門の買取店も、よくある質問のなかで「ご購入された頃と価値が変わっているものも中にはございます」と書いています。

NVIDIAの「GeForce(ジーフォース)」を例にとると、型番の数字で世代の見当がつきます。

名前の例シリーズシリーズの販売開始
GeForce RTX 5090RTX 50シリーズ2025年
GeForce RTX 4090RTX 40シリーズ2022年
GeForce RTX 3080RTX 30シリーズ2020年
GeForce GTX 1660GTX 16シリーズ2019年
GeForce RTX 2080RTX 20シリーズ2018年

数字の上二桁が世代を、下二桁が同じ世代のなかでの格を表し、下二桁は大きいほど上位の品です。

売れる見込みがあるのは、デスクトップの「独立した」ボードです

ノートパソコンは、外せないのが普通です

ノートパソコンにも映像を受け持つ半導体は入っていますが、薄い本体に収めるため、基板に直接はんだ付けされているのが一般的です。米HP社は自社サイトの解説で、ほぼすべてのノートパソコンではCPUやGPU(映像用の半導体)を交換できず、それは基板にはんだ付けされているためだと説明しています。部品を取り出して売るという話は、机の下に立てて置くデスクトップ型に限られると考えてください。

CPUに内蔵された映像機能とは別物です

デスクトップでも、すべての機種にグラフィックボードが入っているわけではありません。事務用や家庭用の機種では、CPU(パソコンの頭脳にあたる半導体)に組み込まれた映像機能で画面を映しているものが少なくありません。この内蔵の映像機能はCPUの一部ですから、取り外して売れる部品ではないのです。グラフィックボードが入っているのは、ゲーム用や写真・動画の編集用に選ばれた機種が中心です。

電源を入れて、名前を確かめてください

デバイス マネージャーで見る

Windowsのパソコンであれば、画面の上で部品の名前を確かめられます。MicrosoftのサポートページWindows の Microsoft 基本ディスプレイ アダプターに、Windows 11とWindows 10での手順が載っています。画面下のスタートボタン(Windowsのマーク)を右クリックして「デバイス マネージャー」を選び、一覧の「ディスプレイ アダプター」の横にある矢印を押すと、映像を受け持つ部品の名前が出てきます。項目が二つ並んでいれば、映像の部品が複数搭載されている可能性がある、と同じページに書かれています。

出てきた名前は、次のように読んでください。

  • 「GeForce RTX」「GeForce GTX」「Radeon RX」とあれば、独立したグラフィックボードの可能性が高い
  • 「Intel HD Graphics」「Intel UHD Graphics」や、「RX」の付かない「AMD Radeon Graphics」は、CPUに内蔵された映像機能
  • 「Intel Arc」はCPU内蔵の映像機能にも使われている名前なので、背面の確認もあわせて行う
  • 「Microsoft 基本ディスプレイ アダプター」としか出ない場合は、部品を動かす専用のソフト(ドライバー)が入っておらず、名前が読めない状態

ここに名前が出るのは、パソコンがその部品を認識している証でもあります。名前の出た画面をスマートフォンで撮っておくと、動いていたことの控えになります。

パスワードが分からなければ、背面の端子を見る

親御さんのパソコンでは、Windowsにサインインするパスワードが分からないこともあるでしょう。その場合は、本体の裏側をご覧ください。HP社の解説によれば、グラフィックボードの映像端子はたいてい背面パネルの下寄りにあり、上のほうにあるのはマザーボード側の端子です。多くの機種では、下半分に横長の金具が何段か並び、そのうちの一段に映像の差し込み口が一列に付いています。モニターのケーブルがそこに挿さっていれば、グラフィックボードで画面を映していた目印になります。

外すなら、無理をせず説明書どおりに

グラフィックボードを外す作業は、自信がなければ無理になさらないでください。ねじ一本の扱いにも心もとない私が、手順を指南するつもりはありません。パソコンに詳しいご家族やお孫さんに頼めるなら、それがいちばんです。

ご自分でなさる場合も、次のことだけは守ってください。

  • Windowsを終了させて電源が切れたことを確かめ、電源ケーブルをコンセントから抜く
  • 金属に触れて体の静電気を逃がしてから、本体の中に手を入れる
  • ボードはねじや補助電源のケーブル、差し込み口の留め具で固定されていることが多く、外し方は機種ごとに違うため、パソコンやボードのメーカーの説明書に従う

外したボードは、側面や裏のシールを見てください。製品に仕立てた会社の名前と型番が書かれていることが多く、これが査定の手がかりになります。押入れの奥にボードの外箱や付属品が残っていれば、それも一緒に取っておいてください。箱にはJANコードという商品のバーコード番号が印刷されています。

売り先と、売る前の心得

グラフィックボード専門の買取店に相談する

売り先の一つに、グラフィックボードを専門に扱う買取店があります。GPU買取センターは、神戸市の株式会社Rebroが運営する専門店で、兵庫県公安委員会の古物商許可(第631502000030号)を得て営業しています。サイトには、GeForce RTX 50〜20シリーズやGTX 16シリーズ、Radeon RX 7000・6000シリーズ、Intel Arcなど、扱う搭載チップが並んでいます。

買取の方法は、宅配、店頭、出張の三つです。遠方の実家を片付けている方には、全国から送料無料(着払い)で送れる宅配買取が使いやすいでしょう。店頭買取は予約制で、出張買取は大阪府と兵庫県が中心、買取総額5万円以上という条件が付いています。

事前の査定は、名前をニックネームにしたまま、住所や電話番号を伝えずに頼めます。査定フォームでは商品ごとにメーカー名、商品名、状態、JANコード、欠品の有無を尋ねられますから、先ほど控えたシールの型番や外箱がここで役に立ちます。同店は、申告した状態と実物が違わなければ、事前に伝えた査定額を検品後に下げない方針を掲げており、金額に納得できなければ品物を着払いで送り返すとしています。

金額は、型番と状態、そしてそのときの相場で大きく変わります。この手帖で具体的な値段を挙げないのはそのためで、まずは無料の査定で今の値を聞いてみてください。

ただし、どんなボードでも買い取ってもらえるわけではありません。同店のサイトには、正規品でないもの、著しく破損したものや使える状態にないジャンク品、所有権をきちんと証明できないものは買取できない場合がある、と明記されています。「壊れていても部品なら売れるだろう」とは考えず、パソコンが起動してボードの名前が画面に出ることを、外す前に確かめておいてください。

遺品なら、相続人の了承を先に

親御さんのパソコンを売るなら、兄弟姉妹など相続人のあいだで話をつけてからにしてください。相続人が複数いれば、遺産分割が終わるまで遺品は相続人全員の共有になる、というのが民法の考え方です。一人の判断で売ってしまうと、あとでもめる種になりますし、所有権に問題のある品は買取店にも断られることがあります。

子ども部屋のパソコンなら、持ち主はお子さんやお孫さん本人です。遠くに暮らしていても、売る前にひと声かけてください。なお、買取の際には古物営業法にもとづく本人確認があり、宅配買取では身分証のコピーを品物に同封します。

本体を手放す前に、データと回収の段取りを

グラフィックボードは、写真や書類をしまっておく部品ではありません。個人のデータが残るのは、本体に入っているハードディスクやSSD(記録装置)のほうです。パソコン3R推進協会のデータ消去の案内によれば、ファイルをごみ箱に捨てて空にしたり、初期化して工場出荷時の状態に戻したりしただけでは、特殊なソフトでデータを読み取れる場合があります。消去は使っている人の責任で行うものとされ、専用のソフトやサービスの利用が勧められています。ハンマーで叩いて壊すのは、中のガラス製の円盤が砕けて危ないのでやめるように、とも書かれています。

本体の処分にも決まりがあります。「古いパソコンは粗大ごみ」と考えがちですが、自治体によってはパソコンを収集していません。東京都武蔵村山市のサイトには、「パソコンは、市では収集しません」とはっきり書かれています。家庭のパソコンは、資源有効利用促進法にもとづいてメーカーが回収し、資源に戻す仕組みになっているためです。パソコン3R推進協会のPCリサイクルQ&Aをもとに、回収先を整理しておきます。

パソコンの種類回収先費用
PCリサイクルマークあり(2003年10月以降に出荷された家庭向け)製造したメーカー無償
マークなし(2003年9月以前に販売されたもの)製造したメーカー回収・再資源化料金が必要
自作のパソコン、倒産・撤退したメーカーのものパソコン3R推進協会有償
取り外した部品だけお住まいの自治体に相談自治体による

ゲーム用のパソコンは、お孫さんが部品を買い集めて組み立てた自作機ということもあります。その場合は回収するメーカーがありませんから、協会に有償で引き取ってもらうことになります。同協会のサイトによれば、小型家電リサイクル法にもとづき、一部の市区町村や家電量販店でもパソコンを回収しています。グラフィックボードを外した本体を受け付けてもらえるかどうかは、申し込む前に回収窓口で確かめておくと安心です。

まとめ

実家のパソコンを前にしたときの順番を、もう一度並べておきます。

  • デスクトップかノートかを見る。部品を外して売れるのはデスクトップ
  • 電源を入れ、デバイス マネージャーの「ディスプレイ アダプター」で名前を確かめる
  • パスワードが分からなければ、背面の下のほうの端子を見る
  • 外すのは自信のある人に任せ、電源ケーブルを抜いて説明書どおりに
  • 型番と外箱を確かめ、相続人や持ち主の了承を取ってから査定に出す
  • 本体はデータを消してから、メーカーや協会の回収に出す

骨董は、蔵で百年眠っていても値打ちが残ることがあります。けれどもパソコンの部品は、押入れで待っているあいだに次の世代が出て、値が下がっていきます。同じ「調べるのが先」でも、こちらは急いだほうがよいのです。

ものには、作った人と使った人の時間が宿っていると私は考えてきました。お孫さんがお小遣いを貯めて選んだボードにも、お父様が旅の記録を編むのに使った機械にも、それは同じです。次に使う人へ渡せるうちに、渡してあげてください。

捨てるのは、いつでもできます。調べるのが先です。